『 あめ の 日 ― (2) ― 』
う ・・・ 咽喉が いたい ・・・
息が できない ・・・
く くるしい ・・・ くるしい・・・
ここは 戦場 ・・・ ?
・・・ < 仕事 > しなくちゃ ・・・
003 ほら おきるのよっ
あまりの息苦しさに 目がさめた。
視界に映るのは 戦場 ― では なく。
ついさっき、気持ちよ〜く いや 倒れこむみたいに寝入った自分自身の部屋、
今 いるのは自分のベッドなのだ。
「 ・・・ うそ ・・・ ここ わたしの部屋? 」
起き上がろうとしたが 身体中の関節が悲鳴を上げた。
「 ! い った〜〜〜い ・・・・ 」
彼女は そのまま倒れ込んでしまった。
「 ・・・ う〜〜〜〜 どこか損傷した ・・?
そんなわけ ないわ。 だって昨日 そんな激しい闘争は なかった・・・
あ いった〜〜〜〜 腰が 立たない〜 」
腰どころか 股関節もぎしぎし・・・ 鳴っている。
「 わたし ・・・ 壊れちゃった・・・のかしら ・・・
う〜〜 アタマ いたいィ〜〜〜〜 」
起き上がらなくちゃ 〜 と焦ったが 身体はまるで他人のようだった。
「 アタマの中は ・・・ なんとか無事みたい ・・・ね
でもこの身体の不具合は ― 根本的なシステム損傷かも ・・・ 」
身体はそのまま フランソワーズはすこし冷静に現状を分析してみた が。
・・・ う〜〜〜 アタマ いたいィ〜〜〜〜
全身をくまなくスキャンしよう、とも思ったのだ。
しっかし、直にアタマも がんがん〜〜 痛みが襲ってきた。
「 う〜〜〜 ・・・ いった〜〜 目から火花って これ?
いたたた・・・ あ〜ん 息をしても アタマいたい〜〜〜 」
寝返りなんてとんでもない、彼女は仰向けにぶっ倒れたまま呻吟していた。
・・・だ だめだわ コア・システム が損傷したのかも・・・
え〜〜ん 痛覚、シャット・ダウン してほしい・・・
! ああ なんにも稼働しない〜〜
003の身体は どんなにあれこれ 意志の力で弄りまくっても
― 全く反応しないのだ。
「 ・・・ あ〜〜〜 もしかして。 雨に濡れて どっか接着がはがれて
浸水でもしたのかしら・・・ きっとそうよ!
ふん BGの仕事なんて いい加減なもんね! 」
003は心底 腹をたてていた・・・
( いや そんなことはないと思うよ フランちゃん )
「 う〜〜〜 それにしても んん〜〜〜〜 なんで全然動かないの??
そうね こういうのを < 使えねぇ〜〜 > って言うのよ、
ジェットがよく言ってるわよねっ! 」
・・・ いっくら怒っても ぶつぶつ言っても < 不具合 > の
度合はどんどん増してきて 息をすることも辛くなってきてしまった。
「 ・・・ たすけて ・・・ 」
― とうとう 彼女は細い悲鳴を上げた。 それしかできなかったのだ。
ばんっ ・・・・ !
「 ! フランソワ―ズ ! 」
一瞬のうちに 寝室のドアが開いた。
「 はいるよっ! どうした?? 」
常夜灯だけの薄暗い部屋の戸口に パジャマ姿のジョーが 仁王立ちになっていた。
「 ・・・ ジョー ・・・ 」
「 どこを損傷した? 」
「 ・・・ わ からな い ・・・ 全身 いたい ・・・ 」
「 わかった。 ほんのちょっと我慢して! 」
ばさ。 彼はタオルケットごと彼女を抱き上げた。
「 博士を呼ぶから。 メンテ・ルームまでがんばれ。 」
「 ・・・・・ 」
加速装置寸前? のスピードで 彼は彼女を運んでいった。
ああ ・・・ ジョーが きてくれ た わ
彼の腕の中で 彼女はすう〜〜っと痛みすら引いてゆく気がした。
「 ・・・ ふむ? 」
博士は しばらくじ〜〜〜っと彼女の瞳を観察、脈を計っていた。
ジョーにひっぱられ 博士は全くの寝起き状態だったがすぐにきてくれた。
「 博士! メンテの用意 しますか 」
「 静かにしておくれ ジョー。 ・・・ ふむ ・・・ 」
「 あ すいません 一応機器はすべて立ち上げて 」
「 ジョー ・・・ あ〜〜〜 それよりひとつ、頼まれてくれるかい 」
「 ? はい! なんでも! 」
「 あ〜 町のドラッグストアでなあ・・・ 風邪薬 買ってきておくれ。
そうさなあ・・・ 総合感冒薬 とかいうのでよいと思う。 」
「 ・・・ か かぜ くすり・・? ですか
だって・・・ 全身痛いって・・・ きっとコア・システムのどこかに 」
「 いや 普通の風邪 じゃな 」
「 は?? 」
「 誰でもよく引く ・・・ 風邪じゃよ 」
「 か ぜ ・・・ 」
「 昨日 濡れて疲れたからなあ〜 まあ あったかくして
風邪薬飲んで こりゃ気休めだが ゆっくり眠れば ― 回復するじゃろうよ 」
「 ・・・ は はあ ・・・ 」
「 さあさ こんな殺風景なトコロよりも 彼女のベッドの方がいい。
ジョー 整えておいてくれるか
」
「 はいっ あ ・・・ フランソワーズ ・・・
あのう ・・・部屋に入って ベッド触っても いいかな 」
ジョーは おずおず・・・ 彼女に尋ねた。
「 おねがい ・・・ ジョー。
」
「 了解! 」
次の瞬間 彼の姿は消えていた。 ― いや階段を猛スピードで
駆け上がっていった。
「 ・・・ あ 」
「 ふふ やれやれ・・・ アイツは相変わらずせっかちじゃのう
どれ 感冒薬が来るまで これでも飲んでおきなさい。 」
博士は 湯気のたつカップを持ってきてくれた。
「 ? ・・・ サイボーグ用のくすり ですか 」
「 いや ただのカモミール・ティさ。 古典的な 風邪クスリ じゃ。 」
「 〜〜〜〜 ・・・ おいしい ・・・ 」
「 これで温まり ゆっくり眠ればすぐに治る 」
「 はい ・・・ ふふ 懐かしい味 ・・・ 」
「 そうじゃの。 ヨーロッパの人間はコドモの頃 よく飲まされたものさ 」
「 ええ ええ。 ああ ・・・ いい香り ・・・ 」
さきほどまでの 耐えがたい痛みは ゆっくりと消えてゆく・・・
みたいな気がしていた。
とん とん ―
「 ・・・ ? あ ・・・ どうぞ〜 」
深い眠りから ゆうらゆらゆら〜〜 浮き上がってくる最中に
なにかとても控えめな音が聞こえた。
・・・ あ ・・・ ノック かあ・・・
フランソワーズは ゆっくり目を開きつつ ゆっくり返事をした。
「 ・・・ フラン ? 具合 どう? 」
ジョーが ドアの間から顔を覗かせた。
「 ジョー ありがと ・・・ だいぶ いいわ 」
「 よかった〜〜〜 ねえ なにか食べられる? 」
「 ・・・ あ あのう なにか飲みたい 」
「 わかった ホット・ミルクもってくるね! 」
「 ・・・ ありがとう ・・・ 」
ホット・ミルク と 冷たいプリン が すぐにやって来た。
「 ・・・ おいし〜〜〜 」
「 そう? 食欲 戻ったね 」
「 えへ・・・ まだちょっと咽喉 いたいけど
あ・・・ プリン おいしい〜〜〜〜 」
「 よかった〜〜〜 」
「 〜〜〜ん あれ これ 冷蔵庫にあった? 」
「 いや ・・・ さっき風邪薬を買いに行ったときに ついでに ね 」
「 ふうん・・・ ジョー プリン、好きなの? 」
「 普段は 別に・・・ たださ チビの頃 風邪ひいて熱だすと
神父さまが お薬ですよ ってプリンを食べさせてくれて さ・・・
そのプリン、食べるとなぜかすぐに治ったんだよね 」
「 そうなの ・・・ あ〜 美味しかった♪ ごちそうさま 」
「 あ 全部食べたね うん これで治るよ。
なにかもっとたべる? 」
「 今は いいわ。 」
「 おっけ〜〜 あ ミネラルウオーターのペットボトル、
持ってきておくね〜 フランは えびあん だったよね 」
「 わあ ありがとう〜〜 ジョー 」
「 えへ なんでもないってば。
あ 昨日さ ぼくの好きなヨーグルト、 ありがと! 」
「 ? あ〜 ジョーの好きなストロベリー味、でしょ 」
「 そ♪ すごく嬉しい♪ 」
ジョーは にこにこ・・・ 食器類をトレイに集めた。
「 あ そうだ そうだ。 この風邪薬。
えっと 一回二錠、 だって。 ちゃんと飲みなさいって 博士が。」
「 はい。 」
彼女は 風邪クスリを受け取った。
「 あのさ 昨日 ・・・ どうしたわけ? 」
「 ?? どうした・・・って ・・・
カサを持ってなかっただけ だわ。 巡回バス 止まってたし。 」
「 そうじゃなくて ぼく ず〜〜〜〜っと脳波通信で
きみを探してたのに ・・・ ず〜〜っとフル・アカウントが
< お話中 > だった ・・・ 」
「 え?? そんなはず ないわよ〜〜
わたし ず〜っとひとりで歩いてたんだもの。
誰とも 通信していないわよ 」
「 え ・・・ それにさ GPS,切ってた? 」
「 じ〜ぴ〜えす? ・・・ あ〜 あれ ・・・ オンにするの、
忘れてた ・・・ 」
「 ・・・ フラン。 きみね〜 」
「 のど いた〜〜い〜〜〜 」
フランソワーズは 錠剤を呑みこむとベッドに潜りこんでしまった。
「 ・・・ もう ・・・ ま とにかく
今日はのんびりベッドで過ごしなさい て 博士からの伝言です 」
≪ りょうかいであります 009! ≫
最大ヴォリュームで 脳波通信が飛んできた。
「 ! うわ ・・・ 普通に言っていいのに 」
≪ のど いたい ≫
「 はいはい それじゃ またお昼にくるね〜 」
≪ ぐ〜〜 ぐ〜〜〜 ねました 003より ≫
金髪頭は 枕に沈みこみブランケットが半分以上かかっている。
「 ・・・・ 」
ジョーは びみょう〜な笑いを残し 静かに出ていった。
カチャ。 ぱた ぱた ・・・ ぱた ・・・
スリッパの音が遠ざかっていった。
「 ・・・ 行った わよね 」
もぞ もぞもぞ〜〜
しばらくは布団の中でじ〜〜っと耳を澄ませていたが 一分もたたずに
彼女は ベッドから抜け出した。
「 ちょっと寒いかも ・・・ セーター きてよ・・ 」
カーデイガンを羽織ると 窓に寄ってみた。
さ −−−−−−−− ・・・・
外は灰色の雨の帳が 降り続けている。
「 うわあ ・・・ 今日も雨なのね 」
ガラスにオデコをくっつけてみても 庭の緑はぼやけてみえる。
この部屋の窓からは 天気のよい日には水平線がみえるのだが・・・
「 う〜〜ん 海も雨の向う なのねえ 」
灰色の海に灰色の雨が落ちてゆく。
ふうん ・・・ なんか幻想的 ・・・
ろまんちっく かも ・・・
・・・ そうよねえ〜 部屋の中からみてれば
雨ってステキかも
「 ふぁ〜〜〜 なんかぼ〜〜っとしてるわ、 わたし・・・
うん・・・ 関節は もう大丈夫かな〜〜〜 」
彼女は ひょい、と耳の横まで脚を上げてみた。
「 ・・・ うん 痛くないわ。 こっちも ・・・ おっけ〜〜
腰はあ ・・・ 」
反転したり 海老反りをしたり ― ついには逆立ちもしてみたが
「 ・・・ん 大丈夫☆ あ〜〜 でもなんかダルいなあ 」
ふぁ〜〜〜 大きな欠伸を立て続け。
「 ・・・ずっと雨 なのかしら ・・・ 」
ちらり、ともう一度 窓の外をながめてみた。
「 ・・・ ? ジョーってばなんかヘンなこと言ってたわね〜〜〜
脳波通信 ・・・別にシャット・ダウンなんかしてなかったわよぉ
繋がらない って・・・ ジョー、 チャンネルの周波数、
間違えてたんじゃなあい? 」
さ −−−−−−−−−−
雨は 静かに 静かに 落ちてきている。
「 いろんな人に ・・・ 会った わ ・・・ 夢じゃない。
ううん ・・・ 皆が会いにきてくれたんだ ・・・ そうよね 」
母も 恋人も 兄も 皆 彼女に笑いかけてくれた。
「 ・・・ ありがと ・・・ ママン ミシェル お兄ちゃん・・ 」
じんわり 温かい涙が滲み ハナの奥がつ〜〜んとしてきた。
おか〜さん おかあさん〜〜〜 ふと あの賑やかな声が蘇る。
「 あ ・・・ あれは・・・ 」
あのこたち。 うふふ ・・・ まってるわね
なぜか ほんわりした気持ちが湧き上がる。
理屈なんかじゃない、自分自身の中から愛しさが吹き上がってきた。
「 わたし。 あのコ達の < おかあさん > になる。
ふふふ ・・・ いつかしら ・・・ 待ってるからね 」
ふぁ〜〜〜〜 もうひとつ、特大の欠伸。
「 ・・・ 寝よ。 まだちょっとぼ〜〜っとしてるわ、わたし ・・・ 」
バサ ・・・ ことん。
カーデイガンをひっかけたまま フランソワーズはベッドに潜り込んだ。
ガチャ ガチャ ・・・ ごん。
「 ・・・いっけね。 こら ジャガイモ 待てぇ〜〜 」
ジョーはキッチンの床で ジャガイモと追いかけっこをしていた。
「 う〜〜 この袋、底が抜けてるじゃね〜か〜〜 」
ごろごろ ごろ。 やっと拾い集めた。
「 ふう ・・・ これで全部か? う〜〜〜
今夜は くり〜む・しちゅう なんだから!
ジャガイモは必須さ。 あと ニンジンだろ〜 タマネギに ・・・
あ ニンニク ・・・ あるよな。
あとは チキン。 えっと・・・? 」
彼は 『 くりーむ・シチュウ 』 の箱の裏を 熱心に読んでいる。
「 ふん ふん ・・・ あ〜〜〜 筑前煮 とたいしてかわんないよな〜
出汁の代わりに 牛乳と〜 この < シチュウのもと > を
いれれば ・・・ 」
ジョーの周りには 野菜類がひしめきあっている。
「 ジョー ? ちょいとでかけてくるぞ 」
ギルモア博士がキッチンに顔を覗かせた。
「 あ はい ・・・ お帰りは? 」
「 なに、 昼過ぎには戻るよ。 ああ 昼は外ですませるから 」
「 そうですか。 あ ・・・ フラン、 次の薬は昼ごはんの後
ですよね 」
「 あ? う 〜 ん ・・・ 元気になっていたら飲まんでもいいな 」
「 え でも ・・・ 」
「 今 ちょいと見てきたが よく寝ておった。
呼吸も脈拍も正常じゃ。 ゆっくり休むのが一番のクスリさ 」
「 わかりました。 あのう・・・ 昼ごはんってお粥とかがいいんですか? 」
「 かゆ? いやあ もう普通のもので大丈夫じゃろ
ホット・ミルクでもつけてやっておくれ 」
「 はい! あ 博士も気をつけてくださいね〜〜 雨ですから 」
「 おう。 でっかい傘と特製のコートがあるでの フランソワーズみたいには
ぐしょ濡れにはならんよ〜 じゃあ 頼んだよ 」
「 はい 行ってらっしゃい 」
ホット・ミルクと ・・・ う〜〜ん ・・?
博士を見送った後 ジョーはキッチンで唸っていた。
「 ・・・ お粥 とかならレトルトのがあるんだけど・・・
普通の 昼ごはん・・? ・・・ ラーメン じゃあなあ 」
冷蔵庫を開け 食品置き場を覗き ― 困り果てていた。
「 あ ・・・ のど いたい って言ってたよなあ ・・・
じゃあ やっぱ柔らかいモノがいいのかも ・・・
柔らかいモノ って ・・・ あ フランのふわふわオムレツ !
・・・でも ぼくにできる か・・? 」
成功する確率は かなり低い。
「 う〜〜〜〜 ・・・ ぼくができる卵料理って ゆで卵 とぉ・・・
あ! そうだ アレができる〜〜 」
彼は 勇んで冷蔵庫から卵を取りだした。
「 よし! あとは ・・・ 」
冷蔵庫の隣の食品置き場に もう一度アタマを突っ込んでみる。
「 ? なんだ この箱・・・ お〜と・み〜る?
・・・ なんか聞いたことあるな〜
風邪ひいた時に食べる なんて場面、なんかの本で読んだけど
・・・ え どうやって作るのかなあ
ひゃあ〜 これイギリス製だあ グレートが買ってきたのかなあ 」
彼は 箱の裏を熱心に読み始めた。
「 ふんふん ・・・ そっか! よおし 」
コトコト ・・・ トントン ・・・
ジョーは 集中して < 作業 > に取り組み始めた。
サ −−−−−−− 外は まだ 雨。
こんこん。 ドアが遠慮がちにノックされた。
「 入っていいかな〜〜 」
「 あ 今 開けるわ〜〜 」
フランソワーズは ベッドから飛び出してドアをあけた。
「 あれ ちゃんと寝てなくちゃダメだよぉ〜 」
「 平気よ もう。 あ ・・・ それ持つわ 」
ジョーは かなり大きなトレイをささげ持っていた。
「 わ・・・ 触らないで ・・ このまま・・・ あ そこのテーブルに
置いてもいいかなあ 」
「 ええ ええ どうぞ こっちに置いてね 」
フランソワ―ズは あわててベッドサイドのテーブルの上を空けた。
カッチャン。 そう・・っとトレイが置かれた。
「 昼ごはんで〜す。 これをちゃんと全部食べてください。 」
「 わあ ・・・ すご〜い・・・ 」
フランソワーズは 目をぱちくり〜している。
「 ・・・ ジョー が作ったの ? 」
「 えへへ・・・ ちょっと頑張ってみました♪
あ 大丈夫だよ ヘンなものは入ってません。 」
「 うふふ 美味しそう〜〜 」
「 さあ 食べて 食べて〜〜 」
「 はい。 あ ・・・ ねえ ジョーの分は? 」
「 え? 」
「 ジョーのお昼ごはん。 一緒にここで食べましょうよ 」
「 え ・・・だってここ・・・きみの部屋だし ・・・ 」
「 いいわよぉ〜〜 一人きりのご飯 なんて美味しくないわ。
一緒に食べたいわ〜〜 」
「 そ そうだね! じゃあ ・・・ 持ってくるね。
あ ついでにミルク、 もっと熱くしなおしてくる! 」
ジョーは トレイにミルク・カップを乗せ ばたばた・・・・出ていった。
うふふ ・・・ なんか 可愛いなあ〜 ジョーって
フランソワーズは パジャマにカーデイガンを羽織り
なんだかほんわか・・・ いい気分になっていた。
「 じゃ〜〜ん。 はいっ 熱々ミルク〜〜〜 」
カチャ。 ほどなくしてジョーは満載のトレイをもって戻ってきた。
「 まあ ありがと。 わあ 〜〜〜 美味しそう〜 」
湯気のあがる熱々ミルク・カップは 指先にも心地よかった。
「 あ 食欲でてきた? 」
「 ええ。 このスクランブル・エッグ ・・・ すご〜く滑らかね〜
・・・ おいしい! 」
「 えへ ちょこっとミルクを入れてみました♪ ・・・ おいしい?
ホントに? 」
「 ええ すごく。 こっちのはポテト・サラダね? 〜〜 美味しい!
この味・・・ ぴりっと締まってるのは なあに? 」
「 あは ・・・ あのね これ 普通のパック入り・サラダ なんだけどさ
練りワサビ をちょこっと。」
「 わさび?? へえ〜〜〜 すごくいいわあ〜〜
あは お腹空いてきちゃった。 ジョーのお昼ご飯 最高よ 」
「 えへへ ・・・ そう? よかったあ〜〜〜
あ あのう ・・・ おーと・みーる って作ってみたんだけど 」
「 ああ これね? ちっちゃい頃、風邪ひくとママンが作ってくれたわ
ジョー よく作れたわねえ 」
「 あは ・・・ 食糧戸棚にさ おーと・みーる の素 ってのがあってさ。
箱の裏に書いてあるとおりに作ってみました。 」
「 ふうん ・・・あ〜 なんか懐かしい味〜〜 」
「 そう? ・・・ ふうん ・・・ ぼく、初めて食べるよ 」
「 これね ホット・ミルクをかけるともっと美味しいのよ 〜
ほら ・・・ あ 〜〜 のどに沁みるぅ〜〜〜 」
「 あ ・・・ 痛い? のど・・・ 」
「 ううん ううん いい気持ち〜〜ってこと。 」
「 そっか よかった〜 」
「 ねえ ジョーも食べてみて? オート・ミールって案外美味しいのよ 」
「 うん ・・・ イタダキマス。 」
二つのトレイを並べて < 二人でごはん > が始まった。
「 あ〜〜 なんかいっぱい食べちゃったわ 」
「 ・・・ あの 不味くなかった・・・? 」
「 美味しかったです♪ ホントよ 」
「 そ そう? 」
「 な〜によ〜〜 ジョーだって一緒に食べたでしょう? 」
「 ウン ・・・ おーと・みーる って なんかお粥さんみたいだね
醤油とかちこっと垂らしたかった〜 」
「 お醤油?? へえ〜〜 わたし、お砂糖をいれたりレーズンをいれたり
してもらっていたわよ 」
「 ふうん ・・・ いろんな食べ方があるんだね 」
「 そうねえ あ ジョーのスクランブル・エッグ いい味♪ 」
「 えへ そう? 嬉しいなあ 」
「 ジョーってば お料理上手じゃない? 」
「 ・・・ 必死でした。 あ 晩ご飯は 」
「 わたし 作るわ 」
「 きみはゆっくり休んでいて。 ぼくがやる。」
「 わたし もう大丈夫。 晩ご飯 作れるわよ 」
「 博士にも言われたんだ、フランソワーズを休ませてやれって。 」
「 でも 」
「 ちゃんと計画 立ててるんだ。 」
「 け 計画?? ・・・ 晩ご飯の? 」
「 そ。 必要な具材を揃えて 手順もちゃんと確認したんだ。
あとは 実行するだけ さ 」
「 ふうん ・・・ 」
「 だから〜 きみは ほらちゃんとベッドに入って 」
ジョーは 手際よく食器を片づけた。
「 ・・・ なんか ジョー ・・・ 変わった・・・? 」
「 え? なに〜 」
「 ・・・ なんでもな〜い。 」
「 じゃ ぼく、後片付けしてくるね 」
「 ・・・ ごめんなさい 」
「 ? なんで謝るの ? きみは ちゃんと寝てる〜〜 」
「 はあい。 あ あの ・・・ ジョー お願いがあるの 」
「 なに? 」
「 あの ね。 後片付け 終わったら ― また 来て 」
「 え? 」
「 一人だと 淋し・・ じゃなくて! 退屈なんだもん。
なんかおしゃべり してよ 」
「 おしゃべり ・・・? う〜〜 できるかなあ
」
「 ふふふ〜〜 そうやってしゃべってるじゃない?
なんでもいいから ・・・ あのぅ 一緒にいて ・・・ 」
「 わかった 〜 」
にこ・・・っと笑って。 彼は食器類を片しに出ていった。
そめそめ・・・小雨が煙る午後
フランソワーズのベッド・サイドで 二人はのんびりすごした。
ぽそぽそ ・・・ 好きな食べ物 とか 最近見た動画 とか
行ってみたい所 とか た〜くさんしゃべりあった。
「 ・・・ ふぁ〜〜〜 」
「 ? あらら 」
「 ・・・・ 」
ふ・・・・っと言葉が途切れると 茶髪アタマは前にのめり始めた。
「 ・・・ふふふ 居眠りしちゃってる・・・
ジョー ・・・ ご飯作り、頑張ったものね ・・・ ありがと。 」
ちゅ。 やわらかいキスが 彼のほっぺに降ってきた。
「 ・・・ 」
茶色の睫は 頬に落ちたままだ。
「 ふぁ〜〜〜 ・・・ なんか わたしも眠くなってきちゃった 」
ぱさ。 金髪アタマも すぐ隣の枕に沈みこむ。
「 !? あ ・・・ いっけね ・・・ 居眠りしちまった・・ 」
ほんの五分くらいで ジョーが目をあけると − 隣には金髪頭が。
「 あ は・・・ フランってば 」
ねえ フラン ・・・ 雨の日って さ。
なんかちょっと不思議 なんだよね〜
きみとこんなにおしゃべり できたし ・・・
えへ なんか すごく温かい気分〜〜〜
ふぁ〜〜〜 ・・・
ことん。 茶色アタマは 再びゆっくり金色アタマの側に落ちていった。
「 おか〜さ〜〜ん アタシ ここよ〜〜 」
「 僕! ここ! おと〜さ〜〜ん 」
あははは えへへへ カタカタ カタ ・・・
すっかり寝入った二人の周りを 小さな足音がふたつ、駆けまわっていた。
サ −−−−−−−−−
そめそめと 細かい雨が 落ちてくる ― 皆のこころをうるおして
******************** Fin.
*******************
Last updated : 04,30,2019.
back / index
************* ひと言 ************
奇しくも 平成最後の それも 雨の日 の更新となりました。
まだまだ 微甘? な二人 ・・・
チビ達が やってくるのは ・・・ いつでしょうねえ (^.^)